山陽小野田市を歩く|マンホールに描かれた徳利窯の物語

中国・四国

YAMAGUCHI / SANYO-ONODA / JOURNEY 001

足元に残された、セメントの街の記憶。

旅先で見つけた一枚のマンホール。そこには、背の高いレンガ造りの建物と花、そして空に広がる不思議な模様が描かれていました。いったい、これは何を表しているのでしょう。山口県山陽小野田市を舞台に、足元の小さな謎をたどってみます。

2013年1月21日、小野田市で撮影された徳利窯のデザインマンホール
2013年1月21日、小野田市で撮影。写真は山口県在住の古い友人から届いたもの。

01 / THREE QUESTIONS

マンホールに描かれた、3つの「何だろう?」

撮影場所はJR南小野田駅の付近。今回のマンホールは、山口県に住む古い友人が撮影してくれました。じっくり眺めると、3つの疑問が浮かびます。

  1. 中央の、レンガ造りの塔のような建物は何だろう?
  2. 左右に咲く花は何だろう?
  3. 空に浮かぶ曲線は、雲だろうか。それとも煙だろうか?

一枚の図柄を手がかりに、街の歴史を訪ねる旅の始まりです。

02 / INDUSTRIAL HERITAGE

徳利を作らない「徳利窯」

中央に描かれているのは、旧小野田セメントの徳利窯。徳利に似た形からそう呼ばれていますが、焼いていたのは酒器ではなく、セメントの原料です。レンガ造りで、高さは約17.8メートル。日本のセメント産業の歩みを伝える貴重な建造物として、重要文化財になっています。

保存されている徳利窯の姿と保存施設の記録写真
徳利窯の記録写真。保存のために屋根が設けられています(撮影当時の様子)。

昔の製造工程を追うと、当時のものづくりの大変さが見えてきます。窯の中には、燃料と原料を何層にも積み重ね、火を入れました。焼成には平均で約7昼夜。その後、焼き上がった塊を取り出して選別・粉砕し、ふるいにかけ、さらに風化させてから樽に詰めて出荷したそうです。

かつてのセメントづくり
原料・燃料を窯に積む
↓
点火・焼成(平均約7昼夜)
↓
焼き上がった塊を取り出し、選別
↓
粉砕・ふるい分け
↓
風化させ、樽に詰めて出荷

旧サイトに残る資料によれば、徳利窯では約7昼夜でクリンカ(セメントの半製品)を約10トン製造できたとのこと。機械や製法が進歩するにつれ、徳利窯は明治30年代に役目を終えました。今は、街の産業を支えた時代を伝える存在です。

セメント製造に使われた蒸気機関、窯の内部、カラーセメントの資料写真
製造に使われた蒸気機関、窯の内部、カラーセメント。旧サイトに残された資料写真。

なぜ、小野田はセメントの街になったのか

旧サイトで紹介していた郷土資料『伝えたいふるさとの100話』によると、創業者の笠井順八は、新たな仕事を生み出すことを考えるなかでセメントに着目したといいます。小野田には粘土や石炭があり、石灰を運び込める港と工場用地にも恵まれていました。材料、交通、土地。いくつもの条件が、この街の産業の歴史につながっていったのです。

では、マンホールの上部に描かれた曲線は何でしょう。徳利窯の煙突から立ち上る煙にも見えます。図柄の公式な説明は手元の資料では確認できていませんが、セメントの街らしい想像が広がります。

03 / FLOWERS & A WALK

もうひとつの主役は、街の花「ツツジ」

徳利窯の両脇を彩る花は、ツツジ。山陽小野田市の市の花です。旧サイトの記録では、市民投票を経て2006年に選ばれたと紹介していました。産業遺産と花が一枚に収まっているところに、このマンホールならではの魅力を感じます。

山陽小野田市のツツジ、江汐公園、お土産せめんだるの旧サイト資料
ツツジ、江汐公園、銘菓「せめんだる」。旧サイトに掲載していた旅の寄り道メモ。商品画像・価格などは当時の情報です。

花の季節なら、江汐公園にも足を延ばしてみたいところ。旧サイトでは、春のミツバツツジをはじめ、バラやアジサイ、野鳥観察など、四季を楽しめる公園として紹介していました。

旅の記念に「せめんだる」

かつて小野田で作られたセメントは、樽に詰められて各地へ運ばれていました。その歴史をお菓子にしたのが、旧サイトで紹介していた「せめんだる」。セメントをあんに見立てた、土地の物語を感じる最中です。掲載写真や価格は当時の記録のため、購入の際は現在の販売情報をご確認ください。

04 / TRAVEL NOTE

旅のメモ|徳利窯を訪ねる

JR南小野田駅の記録写真
JR南小野田駅。マンホールを撮影した場所の近くです(撮影当時)。

施設名:旧小野田セメント製造株式会社竪窯(徳利窯)
所在地:山口県山陽小野田市大字小野田6276番地(若生町)
最寄り:JR小野田線・南小野田駅

※所在地・アクセスは旧サイトに記載された情報をもとにしています。開門時間、見学方法、連絡先などは変更の可能性があるため、訪問前に施設管理者や自治体の最新案内をご確認ください。


編集後記

足元にある一枚のマンホールが、産業の歴史へ、花の季節へ、そして土地のお菓子へと旅を広げてくれました。次の街でも、少しだけ足元を見ながら歩いてみようと思います。

写真・原資料:旧「ぶらりマンホール」より再編集。マンホール写真は2013年1月21日撮影。歴史的な数値や由来は旧サイトの記録に基づき、現地の最新情報とは区別しています。

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